世界を敵にまわしても



「黒沢は相変わらずだね」


あぁ……先生だ。


やっぱりあたしは、こっちの方がいい。金髪で、眼鏡を掛けてない先生よりも。


今目の前にいる先生の方が、好き。


「……高城も」


あの噂が立ったことに責任を感じて、先生が辞めたことを知ってるクラスメイトは静かになる。


噂から、先輩たちから守ってくれたクラスメイトたちは、気を使ってくれてるんだと思う。


「元気だった? 高城」


泣きそうになる。学校でもう一度、先生が見られて。その姿で、あたしに微笑んでくれて。


嬉しくて、だけどそれが偽りの姿だと思うと苦しくて。


零さんといる先生と、あたしの前にいる先生は、どっちが本当なの?


外見じゃないよ。中身……先生の、心が知りたい。


「!?」


グイッと突然後ろから腕を掴まれて反射的に振り向くと、晴が眉を寄せてあたしを見下ろしていた。


「……晴? 何、えっ! ちょっ……」


晴に強く引かれて、足がもつれそうになりながらあたしは足を前に出す。


一歩進めてしまえばもう着いて行くしかなくて、あたしは連れていかれるまま晴と校舎裏まで走った。