世界を敵にまわしても



「彼女は未成年だから、何か適当にオススメでも。飲めないものはある?」

「……いえ」

「そう。じゃあお願い」


テーブルの上で冷やされていた赤ワインをグラスに注いだスタッフに、零さんは下がるように合図しながらあたしへ視線を映す。


「きっと会いにくると思ったわ」


真っ赤なルージュを引いた唇は、あたしを不快にさせる言葉しか言わないのだろうか。


「……さっきから怖じ気づくとか、同じドレスかと思ったとか。あたしのことからかってるんですか?」

「そうね。逃げたら面白いのにとか、同じドレスだったら笑ってやろうかと思ってたのに。つまらない子」


いくらあたしでも、こんなホテルのレストランに呼ばれて私服でくるほどバカじゃない。


ドレスはあたしのじゃないけど、同じ格好で再び会うのは癪だったから椿に借りたんだ。


グレーの半袖ミニ丈で、ハイウエストに薄いピンクのリボンベルトがついたもの。


零さんは黒のロングドレスを着ていたけど、体のシルエットが分かる色気のあるものだった。


「見すぎ。そんなに自分と似てる顔がめずらしい?」


……やっぱり、零さんは先生の居場所を知ってると思う。


でなければ会う必要もないし、意地悪いことだって言わない気がする。