「氷堂さんに会わせて!?」
次の日の放課後、部活中だった晴のもとに椿と2人で押し掛けた。
ヨッシー達が何事かと見てくると、晴は慌ててあたし達を廊下に押し出す。
ピシャンと締められた防音のドアを背に、晴は意味が分からないという顔をした。
「何で? だって、奏ちゃんと別れたのだいぶ前だろ?」
「……そうだけど、もう1回ちゃんと会って話したいと思って」
「言っただろ、あのコンサート行った日に零ってやつと朝霧会ってんだよ。美月の前で携番変わってねぇって言ったみたいだし」
「あぁ……そっか。もしかしたら奏ちゃんの居場所知ってるかもって話な」
そう。もしかしたらの話。
学校を辞めた先生に残ってるものは何だろうって考えた時、嫌だけど、真っ先に浮かんだのは零さんだった。
本当は音楽とピアノだって思いたかったけど、一度浮かんだ存在は消えることがなくて。
左手を怪我するまで、ずっとピアノ漬けの毎日を送っていた先生。
常にそのそばにいた零さんしか、きっと先生には残っていないと思った。
「……分かった。ていうか、零さん今リサイタルしてるはずだから、親に言えば会えると思う」
「ごめん。お願いしていいかな」
「いいって! 俺に出来ることなら何でもするしっ」
晴がそう笑ってくれたから、あたしも微笑み返す。
出来れば二度と会いたくないと思ってたんだけど、そんなこと言ってる場合じゃない。
それから2日経った頃、晴はお願いした通り、あたしが零さんと会える機会を作ってくれた。



