世界を敵にまわしても



「……あのさぁ、アタシたち別にリンチしようってわけじゃないんだからさ。通してくれる?」

「1回言い聞かせないと、分かんないっしょ。ねー?」


ねー?と言われても、あたしは晴から視線を逸らせなかった。怒ってる晴を、初めて見たから。


「そういうの、意味あるんすか? 自分らがスッキリしたいだけだと思うんですけど」

「そーそー。どうにもならないから、美月に八つ当たりたいだけじゃーん?」

「ぎゃははは! もう無理! 菊池にだけは言われたくねーっ!」

「~っうるっさい黒沢! 消したい過去を持ちだすなっつーの!」


黙るあたしは、晴と菊池さんと椿を見ていた。


急に胸に熱いものが込み上げて、どうすればいいか分からなくて。


そうしてる内に他のクラスメイトまで口を開くから、ギュッと下唇を噛んだ。


「あのー、俺ら今必死なんで、帰ってもらっていいですか?」

「てか、男たらしとか。美月そんな子じゃないのにさぁ……」

「寄ってたかって、先輩かっこ悪いっすよー」

「つーかマジでかまってる時間ないから!」

「いっ……!たぁ……何すんだよ!」


うつむいていたあたしの腕を圧迫していた力が消えて、代わりにスッポリと後ろから抱き締められた。


香水の匂いで椿だと分かる。あたしを抱き締める前に、痛いと言った先輩の腕を引っ張って外してくれたんだろう。


「美月と話してぇなら、ウチら全員相手してからにしな。ま、無理だと思うけど」


……やだな、もう。