世界を敵にまわしても



「ちょっと借りるだけじゃん?」

「美月ってあんたでしょー?」


菊池さんを見下ろす先輩とあたしを見る先輩に分かれて、何の用だなんて分かり切ったことを聞くつもりはない。


「……朝霧先生のことですよね」


あたしが言うと、先輩たちは一斉に視線を向けて来る。


「まぁ、それと、色々?」


あぁ、多分晴のことも入ってるんだろうな。


噂を全部把握してないから、こういう時ちょっと対応に困る。


しかも教室まで来るうえに、みんなの前だってことが気まずい。


「ここで話せばよくなーい? 先輩がこぞって1人呼び出すとか、イビりますーって言ってるようなもんじゃん?」


いや、ここで話されるのはもっと気まずい。


菊池さんの言葉に心の中で突っ込むと、ひとりの先輩が眉間にシワを寄せた。


「……何なのアンタさっきから。超生意気」

「えー。だってほんとのことじゃぁん。ていうか必死すぎてウケるんですけどー」

「ぶはっ!」


菊池さんがそれを言うか。


椿が吹き出して分かったのか、菊池さんは「何よ!」と怒っている。


「ウザー……」

「ちょっと、いいから来て」


先輩の1人に腕を掴まれると、ガタッと席を立つ音が聞こえた。見ると、晴が立ち上がって行く手を塞いでいる。