「ねぇ美月ぃ、あたし前髪あるのとないの、どっちがいいと思うー?」


鏡を覗きながら、横に流してる前髪をすく菊池さん。鏡と同じようにデコデコな爪は凶器になりそう。


「どっちでもいいんじゃない?」

「どうでもいいの間違いだろ?」

「ちょっと! ケンカ売ってんの!?」


菊池さんの反応に、あたしも椿も笑う。


こんな風に話す日が来るなんて思わなかったと、何度考えたんだろう。


こんな学校生活を送れるのは先生のおかげだと、何度感謝したんだろう。


楽しさと切なさが同時に襲うなんて、おかしいよね。


「おっはよー!」

「おー! 晴! はよーっ」


クラスの人気者が登校すると、菊池さんがピクリと動く。


「早くしてっ」


ボソッと言う菊池さんにあたしは携帯を見ながら口の端を上げて、椿が予想通りの言葉を言った。


「やべー失敗した」

「ちょっとぉぉお!!」

「あはは! 嘘だから大丈夫だよ」

「嘘じゃねーし」


言いながら椿もおかしそうに笑って、菊池さんの髪を巻いていく。


すると、笑ってるあたしたちに気付いたのか、楽しいことが好きな晴が近付いてきた。