「朝っぱらからゴワゴワの髪触らせんじゃねぇよ」
「はぁ!? 昨日美容院でトリートメントしましたぁ」
「座れよ早く」
「椿、鞄かして」
あたしは椿から鞄を取り上げて、椿はコテを受け取ると椅子に座った菊池さんの後ろ髪を巻き始める。
何度か見た光景だけど、やっぱり何だかんだ仲はいいのかもしれない。
……あたしは派手じゃないから、その点は菊池さんとの方が話合うだろうしな。
「あ、美月~! あたしの机から鏡持ってきてぇ」
椿と自分の鞄を机に置きに行くと、菊池さんに言われて返事もせず取りに行く。
デコ盛りというのか、何だか凄いことになってる折り畳みの鏡を持って行くと、菊池さんは「ありがと~」と鏡を開いた。
「ちゃんと綺麗に巻いてんの~?」
「ウッセーな。お前よりはうまいっつーの」
「アタシの巻き髪歴ナメんな!」
髪の毛巻くのに歴史なんてあるのか。
そう思いながら菊池さんが座る前の席を借りて腰掛ける。
夏服に衣替えしたのはつい最近のような気がするのに、今はもうみんな冬服だ。
長袖のワイシャツだけだったり、カーディガンを羽織ってたりの差はあるけれど。
……今年もあと3ヵ月か。早いな。



