世界を敵にまわしても



「あーあ、成績表見せたら絶対怒られる~」

「あー、親ね。つぅか普段から勉強しろとか。うるせー、してるしって感じ」

「してないでしょ! まぁあたしもだけど、ダルいよねー親って」


――あぁ、またか。


「「「いいなぁ、美月」」」


あたしの成績表が?
それとも親に怒られないことが?


親に興味すら持たれてないのに、笑わせてくれる。


「お前らねー、羨ましがる前に頑張れよ」

「あーあ。そういう事言っちゃうんだ」

「ウチ等だって頑張ってるんだよ~」


ミキ達と朝霧先生の会話も、ザワザワと騒がしい学年ホールも、あたしを嫌な気分にさせる。


羨ましいのは、あたしの方だ。


あたしなんか1位を獲り続けても、成績を落としても、何も言われないんだから。


凄いなんて言われたいわけじゃない。羨ましがられたいわけでもない。


怒られても、怒られなくても、興味を持たれるならいいじゃない。


それがどれだけ幸せなことか分からないから、親がウザいなんて言えるんだ。


――なんて、そんなことすら言えないんだ、あたしは。


学年1位の成績を羨む人は、あたしが家に居場所がないなんて思いもしない。


代わりに学校で自分を偽ってまで居場所を作るあたしを、誰が想像出来るだろう。



――気持ち悪い……。


あたしが本当に凄いなら、何でこんなに惨めな気分になるのか、誰か教えてよ。