世界を敵にまわしても



「……何してんの?」


昼休みの食堂、焼肉定食を食べる椿の前で本を開いていたあたしは、椿に視線を移す。


「フランス語の勉強」

「フランスにでも行く気か」

「行かないけど、英語はもうやるだけやったし」


本を閉じると、椿は似合うのか似合わないのか微妙な焼肉を口に運ぶ。


個人的にその外見ならオムライスとか食べてほしいけど、やっぱり違和感はないかも。


椿イコール肉食って感じだもんな……。


そんなどうでもいいことを考えていると、椿は水を飲んでグラスを置いた。


いつも最後にカンッと立てられる音は、椿がご飯を食べ終わった合図。


「可愛げが、ない」

「……はい?」


いきなり何の話だろうと思ってると、椿はテーブルに頬杖をついて不満げにあたしを見つめる。


「日に日に濃くなるそのクマは何」


言われてパッと目元を抑えると、椿は「ヘタクソ」」毒づく。


慣れないコンシーラーを使って、ちゃんと隠してるつもりだったんだけど、椿にはバレバレらしい。


「泣き腫らしてる方が、まだ可愛げがある」

「……」


そう言われて、この時初めて気付いた。


あたしはきっと、もう先生のことで泣きたくない。