世界を敵にまわしても



「ぎゃー! 見て! 美月ぃ! 2位の人と27点も差があるよ~!」


お願いだから騒がないでほしい……。


「すっげー。もしかして1年の時もずっとトップ?」

「えぇー、美月って勉強してんの?」

「……あたしは部活もバイトもしてないから」


無理矢理笑顔を作ると、頭上から聞こえた「それにしても凄いな」という声に固まる。


「せんせぇ~!」

「2年の階にいるなんて珍しいね」


振り向くと、本来職員室か3階でしか見掛けない朝霧先生が立っていた。


放課後は音楽室に来ればいいと言われたけど、あたしは結局一度も行かないままだったのに。


朝霧先生はあたしと目が合うと、相変わらず微笑みを向けてくる。


「凄いな高城。断トツでトップだ」

「……別に凄くないです」

「はは、謙遜することないのにな?」

「そうだよー! 凄いんだからもっと喜べばいいのにっ」


ミキがそう言うけれど、これっぽっちも喜べなかった。あたしは喜びや嬉しさよりも、安堵感のほうが強いから。


「まぁ美月はクールだしねー」

「そういうお前はいつも毒舌だよ」

「はぁー!?」

「あはは! 先生ってよく分かってるよね!」


朝霧先生と楽しげに話すミキ達から、あたしは半歩後ろに下がった。


話を聞いてるフリして笑顔を作って、時間が過ぎるの待つ。