世界を敵にまわしても



「美月。……美月」


うつむいたあたしの手に、先生の指が絡まる。だけど今顔を上げたら涙が零れそうで、無理だった。


「……生徒に手を出した俺が言えることじゃないけど、聞いて?」


嫌だ。聞きたくなんかない。


2人で頑張ろうって言葉しか、聞きたくない。


「俺はね、美月。教師として、美月の未来は壊せない。壊したくないんだ」

「っ教師の言葉が聞きたいんじゃない!」


床に放った言葉に先生は黙って、あたしは絞り出すように言葉の続きを言った。


「教師じゃなくて、朝霧奏で答えてよ……」


教師だとか、生徒だとか。学校のこととか噂のこととか。


そういうの全部取っ払って、1人の男としての言葉が聴きたい。


ねぇ先生。


先生は、あたしを好きでいてくれるでしょう?



「……もう一度、恋が出来て良かった」

「……」

「美月と出逢えて、好きになって、想いが通じて……幸せだった」


……待って。何で。


違うでしょ、そうじゃないでしょ?


「俺がダメな男だから、美月には色々迷惑かけたし、不安にもさせたけど。それも全部含めて、幸せだったよ」


ゆっくりと顔を上げると、先生は伏せていた目をあたしに向けた。


穏やかな笑顔が、あたしの心を貫く。