世界を敵にまわしても


「そうか。ではなぜあのような噂が立ったのか、身に覚えがあるなら話していただきたい」

「私が高城に、放課後の雑用を頼んでいたせいだと」

「それは、音楽室でかね」

「いいえ。正確には音楽室の、準備室で」


先生のよく通る声が、理事長室の壁に反響するようだった。


あたしは生唾を飲み込みそうになりながらも、それすら我慢する。


「そうか……高城くん、朝霧先生の言葉に間違いはないかな」


平常心。
それを頭に置いて、毅然とした態度を取り続けなきゃ。


「ありません。ただ付け足すなら、あたしが授業中に内職をしていたから、雑用を頼まれました」

「そうか。他に付け足すことは」


――大丈夫。


大丈夫。


あたしは、失敗なんかしない。


「この学校には自習室がないので、図書室を利用してました。けれど他の生徒が会話等するので集中出来ないという話を朝霧先生にしたところ、配慮していただいて音楽室も利用するようになった……とだけ」

「ふむ……朝霧先生、高城くんの話に相違ないかね」

「ありません」


理事長は考えるように机に肘をついて、顎の下で指を絡めた。沈黙が訪れると、やけに秒針の音が聞こえる。


1番耳障りなのは、耳の奥で響く自分の鼓動だったけれど。