何の感情も顔に出さず、いかにも噂が不快だと思ってる、成績優秀な高城美月を演じなければいけないんだ。
そのことだけは、ここに来るまで何度も頭の中で繰り返した。
この恋を、守るために。
「すまないね。5時間目の授業は出席にするよう教科担当に言っておいてあるから、少し時間をいただきたい」
「構いません。2年生の範囲は全て終えてますから」
あくまで冷静に、少し嫌味を含んで言うと理事長は目を見開いた。
左隣には先生、目の前には理事長。他に2人の教師が左右の壁側にひとりずつ立ち、あたしたち3人を挟むように立っている。
「そうか、さすが優秀なだけある」
艶出しされた木製の机の上で両手を組む理事長は、白髪混じりの黒髪を全て後ろに流して固めていた。
あたしも先生もお互いの顔を一度も見ずに、ただ理事長の顔だけを見据える。
……根も葉もない噂だと理解してもらわなければいけない。先生もそう思ってるから、あたしを見ないんだ。
「さて……単刀直入に聞こう」
理事長の目尻にうっすらと見えていたシワが、深くなった。
「朝霧先生と高城くんは、交際をしているのかな」
「していません」
「してません」
先生とあたしが答えると、理事長は視線を右に左に動かしてしばらく口を噤む。



