世界を敵にまわしても



「あぁ……来たか、高城くん」


校舎の中枢、3階にある理事長室のドアを開けると、奥に座る威厳のある男性が声を出す。


あたしは制服を身にまとい、革張りの椅子に座る理事長はいかにも高級そうなスーツを羽織っていた。


「こちらまで来てもらえるかな」

「……失礼します」


来客用のソファーと脚の低いテーブルの横を通り過ぎて、あたしは理事長の前で歩みを止める。


正確には既に理事長を前に立っていた先生の横に、間隔を開けて並んだ。



――5時間目の予鈴が鳴って椿と学食から教室に戻る最中、あたしは1人の先生に呼び止められて、ここまで連れてこられた。


理事長室に来てほしい。


生徒間だけではなく全教師、更には理事長の耳にまで噂が入ったことぐらい、すぐに分かる一言。


午後の授業が始まるというのに、校内放送ではなく直接その一言だけで告げられて。


頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けても、恐怖で体が震えても、否が応でも黙ってついて行くしかなかった。


「高城くんは、初めましてだね」

「……はい」


張り裂けそうなほどバクバクと心臓が鳴っても、体の前で組んだ手に汗が滲んでも、あたしは平然としなければならない。