「あーっ! 美月ぃ、アンタまた噂になってんじゃーん」
教室に入ると、菊池さんが近付いて来る。相変わらず菊池さんを見てると目がチカチカしそうだ。
「やっぱ朝霧センセ狙いだったのぉ?」
悪意というより好奇心だな、菊池さんのは。
でも教室のド真ん中で聞いて来るのはどうかと思う。
「狙ってないから」
「えーっ、だってヤッちゃっただの何だのって凄いよぉ~? つーか晴が当て馬にされてんのが気に食わないんですけどぉ」
あ……そういえば菊池さんって晴のこと……。
菊池さんは腕を組んで、あたしを睨むようにして見上げてくる。
あたしが溜め息をつく前に、椿が菊池さんの頭を鷲掴みにしてしまったけど。
「ちょっ! 何よっ、黒沢!」
「ウッセーんだよしつけぇんだよ誤解だって言ってんだろ。菊池撲滅」
「はぁ!? あたしは晴のことを思って……」
「うわっ! 何やってんだよ椿!」
教室に戻ってきた晴に、菊池さんは口を噤んで椿は手を離した。
「もー、喧嘩すんなよなー」
「菊池が悪い」
「ちょっと! あたしはただ噂のこと聞いただけじゃん!」
菊池さんの言葉に晴は首を捻って、「あぁ」とまるで他人事のように呟く。



