その瞬間まで、あたしは耐えよう。色んな負の感情に、噂や視線に。
負けそうになっても先生を好きという気持ちは本物だから、乗り越えるんだ。
「待ってる」
そう一言だけ告げると、先生は柔く目を細めた。
ありがとうって言う代わりみたいに。眼鏡を掛けない裸で切れ長い瞳は、嬉しいという感情を映す。
ジンワリと幸せな気持ちになって、あたしも微笑み返すと先生はあたしの頬に手を添えた。
グッと近付いてきた先生は、あたしの目元に唇を触れさせる。
感じた吐息と柔らかさに目を瞑ったけれど、離れていく気配に目を開けた。
「送るよ」
「……駅まででいいよ」
何で目元にキスなんだろう。そう思ったけど、何でかその方が先生らしい気がした。
――感じていた先生との溝が少しでも埋まったと感じた夜。
あたしは久しぶりによく眠れた。
何も考えなかったわけじゃないけど、ほんの僅かな時間先生に逢えただけで全てを乗り越えられると思ったから。
きっと大丈夫。
1人では身動きが取れなくても、2人一緒なら、どこまでも行ける気がした。
続く未来が、きっと幸せだと夢見て。



