世界を敵にまわしても



「美月が言う好きは貴重だから、嬉しかったよ」


……結構何回も言ってる気がするけど、足りないのかな。


「先生」

「うん?」


シートに寄り掛かっていた体を起こして、運転席に座る先生と向き合うように座り直した。


そのまま繋いでた手を引っ張ると、先生もハンドルから離れてあたしに体を向ける。


繋いでいた手があたしは左手で先生も左手だったから、自然と解かれた。


「はい」

そう言ったあたしが両腕を伸ばしてわずかに上げると、先生はわからないようで、首を傾
かしげる。少し考えてすぐに気付いたのか、顔を赤くするあたしに先生は吹き出した。


久々に聞く、先生の笑い声。


「あははっ! 何ソレ!」


自分でも思うけど、勇気を出したのに。


「……ぷっ、くくっ……! はぁ、可愛い」


ひとしきり笑った先生は目尻を拭って、未だ腕を伸ばすあたしに微笑んだ。


「……はい」


もう一度言うと、先生の手が伸びてくる。


顔の横を通り向けて、頭の後ろに手が添えられて。引き寄せられると同時に目を閉じた。


ポスッと先生の肩に頭が付いて、首に先生の両腕がまわされる。


あたしは瞼を閉じたまま先生の背中に手を回して、体温だけを感じた。