世界を敵にまわしても



だけど逢っても、何か話題があるかというとそうでもない。


あたしはシートに右肩をつけて先生を見つめるだけで。


先生もハンドルを両腕で包むようにしてもたれかかって、あたしを見てる。


「何か話す?」

「……いい」


会話がなくても、先生を近くに感じるだけで十分だった。


微笑む先生に熱いものが胸に込み上げて、すぐに溶けていく。


愛しさが心に溢れて、零れて、染み込んで、あたしの一部になっていくみたいに。


何度も何度もそれを繰り返して、あたしは先生に手を伸ばした。


触れる。温もりを感じる。


先生があたしの手を取って、握ってくれるだけで泣きそうになった。


「……美月は、あったかいね」

「そう?」

「うん。好きだよ」


何の脈絡もなく言う先生に、あたしは頬を染める。それを見て先生がクスリと笑ったから、ムッとした。


「今更。電話で先に好きって言ったのは、美月なのに」

「……先生だって言ったじゃん」

「俺は言うよ。何回でも、言いたい時に伝える」


先生は目を伏せると繋いだ手を引き寄せて、あたしの手にキスを落とす。


何でかそれには恥ずかしくならなくて、再び絡まった視線の方に胸が高鳴った。