世界を敵にまわしても



「……美月?」


駅前に止まっていた見覚えのある1台の車の窓を叩くと、先生は窓を開けて半信半疑であたしの名前を口にする。


「そうだよ。別人みたいでしょ」


あたしの家の最寄り駅ではなく、そのひとつ前の駅。


椿の家から徒歩5分のこの駅に来るよう、あたしは先生に連絡を入れていた。


「驚いたな……そんなに変わるもの?」


助手席に乗り込むと、先生はあたしの顔をジッと見る。


Sカーブの掛かった胸下まである髪は、ライトブラウンに金や黒のメッシュが入ってるウィッグ。


化粧も、椿よりは薄いけど、普段のあたしからは想像出来ないほど濃い。


「椿にしてもらったの。夜だし車の中だけど、一応」

「……そう。逆に気を使わせちゃったね」

「気を使ってるのは、先生も同じじゃん」


あのコンサートの日みたいに、先生は髪全体を後ろに流して眼鏡も掛けてなかった。よくよく見れば、服装も若者っぽい。


……あぁでも、こっちが本来の先生に近いんだっけ。


「……何?」


あたしがジッと先生を見ていたように先生もあたしを見ていて、突然可笑しそうにフッと笑った。


「いや、お互い必死だなと思って」

「……それは、そうだよ」


逢いたい気持ちを、我慢出来なかったんだから。