世界を敵にまわしても


「ちょ、美月!? どこ行くんだよ!」

「椿のとこっ!」


突然立ち上がって走り出したあたしは晴にそう振り返って、「何でー!?」と叫ぶ声には答えなかった。


人が多い。道があかない。


もつれそうになる足を無理矢理前に出して、人混みを掻き分ける。泣きそうになりながら、それでも前に進んだ。


こんなにたくさんの人がいるのに。あたしは先生と出逢って、恋に落ちたのに。


同じ気持ちで、確かに手を繋いだはずなのに。


逢えない。

逢いたい。

どうしても今、逢いたい。



「椿……っ!」

「ん……あ、ッバカ!」


小石が敷き詰められた道で、あたしはつまずいて前のめりに転んでしまう。


「何やってんだよ、ドジだな」


目の前まで駆け寄ってきた椿がしゃがみ込んで、あたしの手から落ちた携帯を拾った。


地面に膝をついて、手をついて俯くあたしは痛みも気にせずに顔を上げる。


「お願い椿っ!」


椿が携帯画面を見ていたけど、どうせ言おうと思っていたことだ。


「逢いに行きたいの」

「……このメール、朝霧?」


そう。椿にしか頼めないの。自分じゃ、うまく変装出来ないから。


「どんな風でもいいから……あたしを美月から遠ざけて……っ」


我慢出来なくて、ゴメン。


でも、どうしても逢いたいの。


あの人を、1人にさせたくない。



先生が、寂しいって言ってる。