世界を敵にまわしても



「何が最悪って、美月と朝霧の噂は2回目だってことだよ。前は結局、晴中心になったけど。前にも朝霧と噂になったこと覚えてる奴なんていくらでも――…」


そう椿が口を噤んだのは、きっと地面を凝視するあたしの顔が真っ青だから。


カチカチと歯が鳴りそうなほど、あたしの体全部が震えてる。


噂が怖いんじゃない。あたしが悪く言われてるならそれでいい。


悪意の矛先が先生に向けられるのが、怖いんだ。



「……朝霧にも噂伝わってるはずだから。ミーハーな奴らが直接にでも聞きそうだし」


……どうしよう。


実際どんな噂かなんて分からないけど、椿が言った“2回目”という言葉が頭にこびり付いて離れない。


「とりあえず、朝霧に電話して。メールでもいいから、しばらく2人で話すのも逢うのもやめるって伝えた方がいい」


目を見開いてゆっくり顔を上げたあたしに、椿は眉間にシワを刻みながらも真っ直ぐ見返してくる。


心配して本気で言ってるんだと分かるのに、あたしはその提案を受け入れるのを躊躇った。


――先生と、話せない?

いつまで?今日からずっと逢えないの?夏休み中も、夏休みが明けても?



「……ヤダ」


気付いた時には口を衝いて出ていた。


椿が目を見張ったのもお構いなしに、自分がどれだけバカなことを言ってるのか分かっていても。