「お前ら美月を怒らせんなよ!? マジで! 俺この前のテストでもギリ平均だったんだから!」
「俺なんて届かなかったっつーの!」
ギャーギャーと騒ぐ晴とクラスメイトたちを見て、あたしは冗談だよと言うのをやめた。効果があったならあったで、それに越したことはないし。
「美月、アンタ鬼だね」
騒ぐクラスメイトたちの中でひとり、椿だけがあたしに振り返る。
「ていうか、鬼は椿でしょ」
「いい加減どうにかしてこいよ」
小声で付け足された言葉の意味はわかるのに、戸惑う。
……やっぱり、先生とのことがあるからあたしを推薦したんだ。どうにかって言われても……そんな急に、どうしろと?
「!」
チラリと先生を盗み見ると、目が合ってしまった。
逸らそうと思ったのに出来なかったのは、先生が柔く微笑んだから。
「奏ちゃん! 俺ら頑張るからっ!」
晴の声で先生の視界から外されたけど、あたしの胸はドキドキともチクチクとも違う苦しさを感じていた。
「やるなら、とことんやりたいじゃん!」
「やる気があるなら結構。早速だけど今日の放課後、視聴覚室ね?」
その言葉を聞いて、あたしも晴もガックリと肩を落とす。そんなあたしと晴を励ますようにチャイムが鳴ったけど、憂鬱でしかない。
「じゃ、ホームルーム終わり。掃除に入ってね」
先生がそう言うとクラスメイトは喋りながら腰を上げて、清掃時間に入った。
あたしは教室を出ていく先生の背中を見つめながら、追い掛けたい衝動を我慢する。
先生……もう、答えは出た?



