世界を敵にまわしても



「だしょ!? まぁバカばっかなんだけどなー」


そう言った晴に、あたしと椿は同時に吹き出してしまった。


椿が群がる女の子達を見てわざと言った言葉を、晴が自分で言うなんて。


「誰がバカだコラ!」

「やべ。ヨッシー地獄耳だからなー」


晴はメンバーが居るステージに振り向いて、再びあたしと椿に笑顔を見せる。


「俺らこの後飯食べに行くけど、一緒にどう?」

「もちろん全て晴の奢りでーす」

「ぎゃはは! それサイコー!」

「だぁもう! ウッセーな! 奢る金ねぇよっ!」

「ナンパする前に手伝えっつーのー!」

「ナンパじゃねぇぇええ!」


叫びながらステージに走って行く晴と、じゃれるようにステージで騒ぐヨッシー達。


その様子を見た椿が「やっぱバカ」と呟くから、あたしは声を出して笑った。


すると椿はあたしをジッと見て、彼女にしては珍しく、人懐こそうに眼もとを細くする。


わけありそうな微笑は静かに柔らかく融けていって、あたしは疑問に思いながら言葉を発するのを忘れてしまった。