世界を敵にまわしても



「……椿の格好も別に怒られないしな」

「ウチが何だって?」

「何でもない」


カフェオレを受け取ると、椿はアイスティーが入ったグラスを口に付けながら、カウンターに背を預ける。


「あー、そろそろか」

「晴のバンド?」

「そう。見ろ、あの女の群れ」


演奏が終わってトークをするバンドに、人は離れるどころか最初に見た時より人が集まっていた。


ゾロゾロとステージに向かうのは、主に女子だ。見ていると、ステージに居たバンドが袖に下がっていく。


「あ、大丈夫! まだ始まってない!」

「良かったー! 晴達が出るって聞いて慌てて来たっつーの!」


重い扉が開くと、3人の女の子達が入ってきた。


同い年くらいで、見た目は普通の、どこにでもいそうな高校生。


キャッキャッとした声が離れていき、ステージ前に向かわないのはあたしと椿ぐらいだった。


「笑えるわー」

「晴のバンドってやっぱ人気なんだね」

「ただのバカばっかだけどな」


椿がバカだと思わない人って居ないんじゃないかと思いながら、キャーッ!いう黄色い声にステージへと視線を移した。