「え、ちょ、椿っ!?」
突然、椿が1メートルほど前へ駆けたと思ったら、横一列に並ぶひとつのビルに入っていった。
「椿っ!」
追い掛けると、椿はビルに入ったのではなく狭い階段を降りている。
「はーやーくーっ」
10数段程度しかない階段を降りた椿は、下から困惑するあたしを見上げてきた。
いや……早くって。大体ここは何?地下に何があんの?
ていうか言っちゃなんだけど、小汚い。むしろ降りたくない。
「早く来いっつーの! そこに置いてくかんなっ」
「それは嫌っ」
慌てて階段を降りると、すぐに椿に追い付いた。椿は唇を閉じたまま笑って、目の前にある鉄のドアに手を掛ける。
「……ん?」
ドアが開けられ、耳に届いた微かな音に顔をしかめると、椿はあたしの手を引いて中に入っていった。
決して綺麗とは言えない空間。騒がしい歓声と熱気を持った空気に、あたしはここがどこなのか気付いた。
「あっれ!? 椿じゃん! 今日来ないって言ってなかった!?」
廊下を進むと、多分受付をしていた体格のいいお兄さんが手を上げる。
「ただの気まぐれ。2人ね」
デレッと鼻の下を伸ばすお兄さんに眼もくれず、椿はチケットを差し出して何かのチケットと交換した。



