世界を敵にまわしても

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今日は月が見えないと思ったら、夜半になってから姿を現した。


東から上ってきた月はあたしから見て、ちょうど下半分が輝いている。


確か下弦というんだっけ。


……じゃあ、あと3週間くらいで満月か。その頃には、夏休みに入る。


街の中心にある駅。夜10時過ぎにこんなところに立ってるなんて、今までのあたしの人生じゃ考えられない。


「そこの優等生さーん」

「……こんな時間に呼び出して何の用ですか、不良さん」


改札口を前にして柱に寄り掛かってたあたしに、普段と何も変わらない私服の椿が向かってくる。


改めて、学校での椿の格好は制服姿とは言えないなと思った。


「こんな時間って、まだ10時過ぎですけど」

「悪かったわね。こんな時間、滅多に外出しないんだよ」

「ガリ勉だもんな」

何その哀れむような表情。


「まぁいいから、行くべ」


椿はそう言うと長い金髪を靡かせながら歩き出す。あたしはその後に続いて、駅構内から暗闇に明かりを灯す街中へ向かった。


――今日の夜8時頃。


あたしは放課後、先生の前から立ち去ったわけだけど。結局先生は追い掛けてこなくて、そのまま家に帰った。


椿に話そうと思って電話を掛けたら、あたしが話をする前に問答無用で呼び出されたのだ。


だから今、こうして椿と会ってるわけだけど。