『会話は1番、人と人の距離を近付けさせると思うよ』
――近付かない。
『話した分だけ?』
『うん。本当の自分だったら、の話だけどね?』
――嘘ばっかりの先生と話したって、遠ざかるばかりなのに。
「いいんだ、もう。本当に……昔のことだから」
……どうしてあたしの目は、今になって先生の嘘を見抜くんだろう。
今までずっと、白々しい嘘には気付けたのに。
その奥に隠された、先生の本心には全く気付かなかったのに。
「本当だよ?」
――悔しい。
悔しい。
どうしようもなく悔しくて悲しくて、ジワリと涙が浮かぶ。
潤いを持った瞳が視界をぼんやりとさせるけど、あたしを見つめる先生は、あの日のまんまだった。
左手の怪我の事を話してくれた後、あたしの家まで来てくれた夜。消え入りそうなほど脆く見えた、あの時の先生。
浮かべた笑顔があまりにも寂しそうで。今度はあたしが、それを埋めてあげたくなるような。
守ってあげたい。あたしが先生に助けられたように。
今度はあたしが、先生を助けてあげたい。
決め付けていた明日を変えてくれた先生に、自分次第で何もかも変えられると教えてくれた先生に。
今度はあたしが……。
――そう、初めは思ったよ。



