「ねぇ、先生……!」
黙って、俯く先生に苛立ちよりも悲しさが募る。
せっかくの高校生活を楽しまなきゃもったいないと言った先生も、自分をごまかし続けるのも、逃げ続けるのもさみしくないかと言った先生も。
夢を諦めちゃダメだと言った先生も。あたしに向けて言った言葉は、自分に向けた言葉でもあるんでしょう?
本当の自分を曝け出せる場所を与えられたのはあたしだけど。先生は自分にも与えてたんでしょう?
高城 美月の隣に、何の勇気も覚悟もなく。
「……諦めないでよ」
中途半端にしないで。
夢も、あたしのことも。
「ねぇ、先生。今からでもリハビリとかちゃんと受ければ――…」
「零みたいなこと言わないでくれ!」
先生はあたしの言葉を遮って、鍵盤を両手で思い切り叩いたように声を荒げた。
一拍の沈黙の後、先生はあたしを見据える。
憂いに沈んだ瞳には、ありとあらゆる不安が潜んでいる気がした。
あたしに向かって物を言いかけそうにして、だけどすぐに口を閉じて諦めてしまう。
「……もういいんだ」
嘘ばかり言うその口を、閉じれば良かったのに。
……また、離れる。
近付いたと思っていたあたしと先生の間に、目に見えない距離が出来ていく。



