世界を敵にまわしても



「引きずってた元カノって、零さんでしょ?」


駐車場に入ると、あたしは先生の手から逃げた。手を繋がれてるだけで、流されてしまいそうだったから。


零さんの言葉が、頭から離れない。


「答えて」


俯いていた顔を上げると、先生は戸惑った顔をしていた。


苦しげな表情にも見えるけど。絶対に誤魔化されたくない。


「零さんが3年間付き合った人でしょ?」

「……うん、そう」

「何で言ってくれないの?」

「……終わったことだから」


プログラムだけじゃない。

あたしはよく見ずに先生に渡しちゃったけど、チケットにだって出演者の名前は書いてあったはずだ。


「……逢いたかったの?」


嫌な別れ方だったと思うって言ってたけど。結局フラれたのは先生で、引きずってたとも言ってたじゃない。


あたしが誘ったデートが嬉しかったんじゃなくて、元カノの零さんに逢えるのが嬉しかったんじゃないの?


……ダメだ。何でこんな、ネガティブな方向にしか考えられないんだろう。


だって、訳が分からない。頭がぐちゃぐちゃで、胸の奥がひりひりして。


先生が……。



何で、黙るのよ。