世界を敵にまわしても



「ねぇ、まさかと思うけど彼女じゃないわよね?」

「……彼女だよ」

「はぁ!? どう見たって未成年じゃない!」


ていうか、知り合いなの?先生と、この人が?何で?


「ちょっと……まさか生徒じゃないでしょうね」


氷堂さんの言葉に先生は否定も肯定もせずに居ると、氷堂さんが大きく溜め息をついた。


「ホント、昔から何も変わらないのね。外見は変わったけど」


……ほんとに知り合いなんだ。でも、氷堂さんと知り合いだって先生から一言も聞いてない。


何で?それに先生この人の演奏聴いて、具合悪くなったよね?


……この人だから?


「どうせ欲張って、我慢出来なかったんでしょ? ねぇ、美月ちゃん。ソウの扱いは大変でしょう?」


黒目がちの瞳が、あたしを見据える。氷堂さんの瞳は理智的でいて、どこか冷たくも見える強い光を放っていた。


……やっぱり。

そんなわけない、氷堂さんに失礼だと思いながら、でも感じてしまう。


……あたしと、顔の作りが似てる。


「……ソウって、何?」


氷堂さんの質問を無視して先生に問い掛けたのは、既にひとつの答えを出していたから。


こんな時ばかり、自分の頭の回転が速いことが気に食わない。


「……俺のあだ名だよ。昔からの」


奏だから、ソウ?


単純だなと思うのと同時に、そんな些細なことでも、逆に些細なことだからこそ知らなかった自分に苛立つ。