世界を敵にまわしても



「このまま……」


ポツリと途切れた言葉を発した先生を見上げようにも、あたしの頭に先生の頭が乗ってるからかなわない。


「このまま?」


仕方なく訊き返すと、先生は「うん」とだけ言う。


……あたしと同じ事を思ってたってことだろうか。


先生の頭が微かに動いたと思うと、途切れた言葉の続きが耳に届いた。



「このまま2人で、夜になりたい」


「……ん?」


意味が分からなくて眉を寄せると、それは声にも表れたのか、先生はフッと鼻で笑う。


「んーん。何でもない」

「気になる」

「じゃあ考えて」


……教えてほしいのに。


夜……夜? に、なりたいの? 2人で?


「……メルヘンチックだね」

「そこはロマンチックが良かったかな」


だって分かんないし。先生の考えてる事ってやっぱり分かりづらい。


どういう意味?と聞く前に「あ」と先生の声で文化センターがざわつき始めたのに気付いた。


「終わったみたいだね」

「……うん」


そう言ってから自分の状況を今更ながら理解して、慌てて立ち上がる。


先生は突然の事に少し驚いた顔をしてから、どうしたのと言いたげに首を傾げた。


誰に見られるか分からないのに、また流されてたよ……。


ここ、屋外!