最前列中央の指揮者を中心として、 前半分に弦楽器、その後ろ2列に木管楽器。打楽器のティンパニが1 番奥、その前に金管楽器。
女性もいるけど、男性のほうが多く見える。
最後に指揮者が袖から出てくると、静けさに交って緊張感が漂った。
晴のお母さんが指揮者と握手を交わし、指揮者は指揮台に上がる。
数秒の沈黙のあと、指揮者の合図で奏者たちは楽器を構えた。
「!」
強い風を正面から受けたような、堂々とした音に息をのむ。
──ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲。
冒頭から壮大で、どっしりとした力強い音に鳥肌が立った。かと思えばフルートやオーボエの静かで優しげな音が入る。
……聴いたことあるかも。
凄く響きがいい。金管楽器の伸びも綺麗で、テンポも速い。
……あれ、何か弱音でゆっくりに……え、速くなった……え?
そんな風に思ってる間に、再び威厳に満ちた調べになる。
展開が速いというか、間髪入れずに次へ行ってしまう感じだ。
音が弾んでる。クセになりそうなテンポの良さに、次に流れるフレーズがどんなものかと耳をそばだててしまうくらい。
下から湧きあがる様な。前へ前へと進むような。終盤に差し掛かる緊張感の後に、やっぱり壮大で威厳ある盛り上がりを見せて、曲は力強く締められた。



