世界を敵にまわしても



「空調の関係で喉乾燥して、咳出るかもしれないから。一応持ってた方がいいよ」

「……飲食禁止じゃないの?」


受け取ると、先生は深く椅子に寄り掛かって微笑んだ。


「飴は食べる時に音立てなきゃ大丈夫。コンサートによって違うけど、プログラムもらった時、スタッフに聞いたから平気だよ」

「ふぅん」


さすが音大卒というか。詳しいんだな。


とりあえず貰った飴を鞄の取り出しやすい場所にしまうと、先生はプログラムを読み始める。


「……」


あたしも真似してプログラムを見てみるけど、サッパリ分からない。


出演者とタイムテーブル、曲目が書かれてるのは分かるけど。


「ん。これ、ヴァイオリン。宮本のお母さんじゃない?」

「……ほんとだ」


管弦楽団という文字の下に指揮者の名前があり、その下に宮本という名字を見つけた。


……お父さんは別の楽器なんだろうか。っても、顔が分からないから見つかりっこないんだけど。


他にもピアノやチェロ、フルートの演奏者の名前と簡単な説明がされていた。


きっと有名な人なんだろう。コンクール優勝、首席奏者なんて文字が並んでいたから。


……きっと先生にはどれくらい凄いのか、分かるんだろうな。