「わ……広いね」
文化センターにはパフォーマンス広場、シアターホール、交流ホールなんかがあるんだけど、今日はコンサートホールが使われる。
当たり前か……にしても広い。
1000席ぐらいはありそうな会場は、すでにたくさんの人で埋まっている。
「どこに座るの? 指定席だよね?」
「うん、ちょうど真ん中ぐらいの席かな。平気?」
「え? 何が……」
先生に手を差し出された事で、言葉の意味を理解する。
席に行くまでに階段を降りなきゃいけないから、ヒールを履いてるあたしを心配してくれたんだ。
「急な階段じゃないから、平気だよ」
「そう?」
言いながら、あたしの手を取ってくれる先生に頬を染めそうになった。
エスコートっていうか、何でこういうことがサラッとできちゃうんだろう……。
先生に手を引かれながらゆっくり階段を降りて、指定された席に座る。映画館みたいな椅子で、少し緊張がほぐれた。
「コンサートって大体どれくらいなの?」
「2時間くらいかな。アンコールあれば、少し伸びるけど。あ、飴舐める?」
何で、ここで飴?
携帯の電源を切っているあたしに、先生はのど飴らしきものを差し出してくる。



