世界を敵にまわしても



「だ、大丈夫? ゴメン……」


多分、あたしを抱きとめてくれた後バランスを崩したんだろう。さっきの痛そうな音は、先生が机に頭でもぶつけたんだ。


わずかに顔を後ろに向けると、案の定先生は片手で後頭部を抑えていた。


「ゴメン、ぶつけたよね?」


マズイ。笑いそう。


そう思った時には遅くて、尻声に笑いが含まれてるのが自分でも分かってしまった。


「痛いよ。何笑ってるの」


ムッとした表情の先生と目が合って、あたしは堪えきれず笑ってしまう。


「だって、凄い音したから」

「だから痛いって。俺が格好悪いみたいじゃん」


それが可笑しいんだよ。


助けてくれたのに、頭ぶつけっちゃってんだもん。


「誰のせいか分かってる?」

「あたしのせいでしょ?」


クスクス笑うあたしの体が、一瞬で硬直する。


ついでに心臓も止まるかと思った。


先生が仕返しとばかりに、後ろからギュッと抱き締めてきたから。