世界を敵にまわしても



――ガシャンッ!


「「………」」


ギュッと瞑っていた瞼を開けると、先生もあたしを見て目を丸くしている。


2人揃って床を見ると、多分あたしが落としたマグカップが割れていた。


先生の顔が近付いた時に硬直したあたしの体は、手だけ動いたらしい。


何か手にぶつかったとは思ったけど、ぎゃー! って心の中で叫んでたから、それどころじゃなかった。


「ゴ……ゴメン」

色々な意味で。


左右にあった腕の柵がなくなり、先生は一歩後退して俯いている。


左手を口に当てて、右手でお腹を抱えて……笑ってますね。


「ふっ……くくっ……」

「……何が面白いの」

「や……す、凄いと思って……!」


何が凄いんだかよく分からないけど。


先生が笑ってる内にあたしは机から離れて、顔が見られないように背を向ける。


火照った顔を手で扇ぎながら床を見ると、全く飲んでいなかった珈琲がジワジワと拡がっていた。