世界を敵にまわしても



「先生、バレたらダメとか思ってないの?」


菓子箱を机に置いた先生は、マグカップに伸ばした手を止めた。


「あぁ! 何だ、そっちか」

「……は?」


先生はマグカップを手に取って、あたしが淹れた珈琲を一口飲む。


意味が分かってないあたしと違って「美味しい」とか言う先生に、久々にイラッとした。


「そっちってどっち!」

「ははっ! そんな怒らなくても」


怒ってないけど今すぐ怒りたい!


「黒沢は大丈夫だったでしょ? 反対とか、バラすとか言わないと思ったんだけど、違う?」

「……言わなかったけど」


あたしは最初凄く焦ったのに、何でそんなに落ち着いてるんだ。


「多分、宮本も大丈夫だと思うよ。バレても」

「さっきから何でそんな平然としてんの!?」

「えぇ? んー……俺がバレてもいいって思うのは、その2人だけって事」

「……何で?」


先生は再び珈琲を口に含むと、マグカップを机に置いてあたしに微笑む。


「だって、美月の友達でしょ」


……そうだけど。あたしだって椿には言いたいと思ってたけど、晴にまでバレてもいいとは思ってない。