「おいで。今準備室開けるから」
「……今日は何を手伝わせる気?」
「ははっ! そうだな……何頼もうかなー」
クスクスと笑う先生に続いて、開けられた準備室に入る。
2週間前と特に変わらないけど、強いて言うなら机の上が汚くなったことくらいかな。
「試験の採点終わったの?」
「ん? 終わったよ。平均点も出したし、あとは返すだけ」
「ふぅん」
促されるよりも先に椅子に腰掛けると、先生は机の上にあった物を端に寄せて抱えていた物を置いた。
あたしは膝に置いていた鞄から、いつ取り出そうか考えている。晴に貰った、ペアチケット。
「何か飲む? って言っても相変わらず珈琲か紅茶の二択だけど」
「カフェオレ」
「えぇ? ……ミルクあったかな」
勝手に備え付けたらしいポットの前に立って、先生は近くの棚からミルクを探してくれる。
その背中を見ながらちょっと悪戯心が芽生えて、あたしはソッと先生の背後に近付いた。
「あたしが淹れてあげようか」
突然横に現れた人影に先生はビクッと肩を震わせて、口を緩ませたあたしを恨めしげに見てくる。
「ビックリした?」
「……したよ。可愛いとも思ったけどね」
「驚くだけでいいんですけど!」
何であたしまでビックリさせられなきゃいけないの。



