世界を敵にまわしても



「椿が言ってた事、当たってたんだよね」


グレーと青のチェックスカートの上で、あたしは自分の両手を握る。


「当たってたって、左手の欠陥?」

「そう。人差し指と小指がうまく使えないんだって」

「……ふーん」

「昨日の夜、その話を電話でした後ちょっと会ったんだ」


昨晩の事を思い出してもやっぱり夢みたいに思えるけど、現実だった。


声を失ったような笑顔も、あたしを抱き締めた先生の体温も。あれは夢じゃない。


数分か数十分か。抱き締め合ってた2つの影は、先生によって離されて。


見上げると先生はあたしの頬を撫でて、「明日も頑張って」と言っただけだった。


「先生は何てことないみたいに話してくれたけど、多分左手の話はあんまりしたくないんだと思う」

「会って、そう思ったわけ? 他に何か話さなかったの?」

「うん。何か元気なかったし。会話も、今日の試験とか。頑張ってとかそれぐらい」


そう、本当にそれだけだった。


先生が言った「明日も頑張って」の後に、“帰りなさい”が続いてるのだと分かっていたけど、俺は大丈夫だからと言われてる気もした。