世界を敵にまわしても



それから勉強して、勉強して。晴や椿、ミキ達や菊池さん達にも勉強を教えて。


繰り返された勉強はあたしに何の不安も持たせなかった。


ただあったのは頑張るという気持ちと、頑張ったと言える自信だった。



定期考査3日目、お昼前に現代文の試験が終わる。残るは明日の3教科だけ。


「ハイ終了! ペン置いて。後ろの人集めて持ってきてー」


現代文の試験官は先生。


時々暇そうにコッソリ欠伸をしてたのを2回も見てしまった。


1度目は呆れて、2度目は可笑しくて笑ったあたしは余裕があったんだと思う。答案を2回見直しても、終了時刻まで3分残ってたし。


先生が言い付けた通りに後ろの席の子が答案を取りに来て、裏返して渡した。


フゥと一息ついて問題用紙を折りたたんでいると、突然前の席から白い腕が伸びてくる。


「ちょ、危ないな」

「引っ張ってー」

「……」


振り向きもせずそう言う椿の細い手首を掴んで、あたしは力加減もせずに引っ張った。


「あー……伸びる伸びる……イッテ! イテェッ痛い痛い!」


あたしの手から逃れて、椿は勢い良く振り返る。


「痛いっつーに! バカか!」

「引っ張れって言ったじゃん」

「加減ってもんがあんだろ!」

「そこの2人、喧嘩しなーい」


先生は呑気な声でそう言って、クラスメイトは可笑しそうに笑う。


もうだいぶ、椿は悪く言われなくなった。


菊池さんとの仲はよくないけど、ちょくちょく会話するようにもなったし……もうこのクラスにスクールカーストなんて言葉は当てはまらないと思う。