「ご飯ー!」
リビングに入ると、那月は食卓に並んだ夕飯に声を上げる。
既に兄とお父さんが席についていて、あたしは兄の隣でお父さんの前に座った。
「那月、行儀良くなさい」
椅子に膝をついてテーブルの上を見渡す那月に、母はピシャッと言い放ってグラスを置く。
「いただきまーす!」
那月の元気な声から始まり、あたしも小さくいただきますと呟いて味噌汁を口に運んだ。
未だにまだ慣れない。慣れないというか、緊張ともまた違う、ソワソワした気分になる。
1人でご飯を食べるのが当たり前な事だったし、お父さんまで揃ってる食卓は何だかむず痒い。
それは母も兄も同じなんだろうけど……那月だけだろうな、平気なのは。
お父さんは無表情だから分からない。
特に会話が弾むわけでもなく、那月が話す内容に兄が相槌を打って、時たまそれに母が入るだけだ。
……あたしって多分、お父さん似だな。
そんな事を考えながら10分足らず経った時、突然父に名前を呼ばれた。
「もうすぐ試験なんだろう」
「……え。あ、うん」
何で知ってるんだろう。あ、那月かな。
お父さんが帰ってきた時あたしだけリビングに居なかったし、那月が部屋で勉強してるって言ったのかもしれない。



