「おねえちゃーん!」
試験勉強をするからと先生に告げて帰宅し、部屋に籠っていたあたしの耳に妹の声が届く。
振り返ると、ちょうど那月がドアを開けたところだった。
「どうしたの」
「あのね、ごはんだって! おとうさんも帰ってきたよっ」
あぁ、さっき聞こえた玄関が閉まる音はお父さんか。
「分かった」
「テストのお勉強してたの?」
テテッと可愛らしい足音で近付いてきた那月は、机に広がる教科書や問題集を見つめる。けれどその表情は小学生にしては険しい。
「ん、んー? 難しそう!」
「ははっ。高校生のだからしょうがないよ」
って言っても那月は今中1後半の勉強もしてるはずだけど。その内追い越されそうだ。
「おにいちゃんもね、この前変な文字読んでた!」
「あぁ……英語以外の外国語だよ、多分」
兄は英語が完璧だし、何か別の外国語に手を出したんだろう。
腰を上げると、那月はあたしの横にピッタリとくっ付いて歩き出す。
「……那月、将来の夢ってある?」
「およめさん!」
「……そっか」
意外過ぎる。
もっと小さい子が言う台詞だと思ってた……。



