世界を敵にまわしても

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週が明けて月曜日、音楽の授業中。


いつものように自由時間みたいなパート練習の後、先生が手を叩いた。


「ハイ、パート練習終わりにして。今日はちょっと合わせてみよう」


先生はそう言いながらピアノの前に腰掛けて、「パートごとに並んで」と声を掛ける。


「ダル過ぎ」


隣に居た椿が本当に心底ダルそうな声で言って、クラスメイトは音楽室の中央に集まった。


その列の汚さに先生は困ったように笑いながらも、楽譜を捲っている。


……見れば見るほど、放課後と休日とは雰囲気が違うな。


「……何ニヤケてんの?」


隣に立っていた椿に肘でこづかれ、あたしは瞬時に平静を装う。


「え? 笑ってないけど」

「いや、めっちゃニヤケてたけど」

「何でもないよ」

「何ソレ」


 疑うような目つきの椿に危険を察知すると、ポーンと鳴ったピアノの音に助けられる。見ると、先生が楽譜を確認していた。


「じゃ、とりあえず最初俺だけ弾くから。聴いててね」

「「ハーイ」」とバラバラな返事にいささか不安になりながら、先生の伴奏が始まった。


あ……歌詞全部覚えてないかも。


いつもラジカセから聴いている合唱曲が、先生の指で奏でられる。


「……」


そういえば、先生がピアノを引いてる姿をマジマジと見たのは初めてかもしれない。


前に楽譜の曲を弾いてた時は、涙でよく見えなかったもんな。