世界を敵にまわしても



振り向くと、突然頭の後ろに先生の手が回って引き寄せられた。


バランスを崩してとっさに運転席のシートに手をつくと、額に柔らかい感触。


それに、チュッという軽いリップ音が耳に届く。


「………」


ギギギ……と音でも鳴るのかと言う程小刻みに顔を上げると、先生の顔が目の前にあった。


「おやすみ? 美月」


首を傾げて半ば楽しむような眼差しと上がった口の端に、あたしは思い切り体を引く。


「ななななな、何しっ……!」

「額にキス?」

「ぎゃー! 言わなくていい! 言うな!」


額を隠したって何の意味も無いのに、額を手で覆うあたしに先生はクスクスと笑う。


ていうか、海でも思ったけど美月って何!いやあたしの名前だけど!


呼び捨てもキスもいきなり急に突然何なの!


「あはは! そんなに反応してもらえて嬉しいよ」

「バカじゃないの!?」


こっちはパニックを起こしそうだっていうのに!