世界を敵にまわしても



「ハイ、到着」


海の前で2時間程過ごして、夜6時過ぎ。


あたしは先生に駅まで送ってもらった。


海でたくさん話したような、そうでもないような。


地に足が着かないような、ふわふわした時間を過ごした気がする。


「ありがとう」


シートベルトを外して、足元に置いていた鞄を拾い上げた。それを一度膝に置いて、先生と向き合う。


「今日は、ご馳走様でした」

「ははっ! うん、どういたしまして」


あと何だっけ。
何か言うことあったっけ。


「気を付けて帰ってね」

「うん、何か可愛いね」

「……そうやってすぐ言葉に出さないでくれる?」

「え? 何で?」


心臓がね、バクッて鳴るから。寿命が縮むんです!


呑気な先生の顔を見てわざとらしく溜め息を吐くと、あたしは鞄のヒモを手に掛けた。


「じゃあ」

「うん、気を付けて」


ドアを開けようとすると、後ろから先生が「あ、待って」と声を掛けて来る。