世界を敵にまわしても



「大学1年のときに付き合った子かな」


大学と聞いて、胸の奥がざわつく。


1番長く付き合った人との始まりが、そんなに昔じゃないと思ったから。


「……どのくらい長かったの?」


先生も海を見つけたのか、あたしの視線には答えず僅かに窓を開けた。


潮の匂いが鼻先をくすぐり、反射的に窓の外に目をやる。


「3年」


波の音に交じって聞こえた声はどこか掠れていた。


もう目の前には海が広がって、駐車場に車が止まった事に気付く。


「大学4年の夏前に、別れたんだ」


続けられた言葉に引かれるように、あたしは海から先生へと顔を向けた。


……3年って、長いんだろうか。あたしには十分長く感じるけど、別れてから今までの時間が分からない


もう2年? まだ、2年?


「何で別れたの?」


先生はシートベルトを外してエンジンを切ると、シートに深く凭れた。


「何でだろう。喧嘩別れっていうか、意見が合わなかったのかな」

「……意見?」

「んー……意見ていうか、価値観? 将来進む先は一緒だったはずなんだけどね。どこかで食い違った」


……それは、彼女も教師を目指してたってことだろうか。


……別れを切り出したのは、先生? 彼女?