世界を敵にまわしても



車に乗って向かった先は、街中から20分程度の場所。


何て言うか、若い子が来ないとか年配の方が来る場所とかじゃなくて。外観は本当に、どう見ても普通の一軒家だった。


「……どちらさまのお宅?」

「こっち」

こっちってどっち!


戸惑うあたしなんかお構いなしに、先生は腰辺りまである小さな門を開けて家の裏手に回る。


あたしは石畳の上を警戒するように歩いて、松の木や盆栽が飾られている庭に視線を張り巡らせた。


……和風な家。先生の知り合いでも居るのかな。


そう思うと、余計ここに連れられてきた意味が分からなくなる。


「気を付けて」

「……あ」


見上げた先に、家の外に付けられた階段を2段上った先生が居た。その1番上に、看板らしきものが見える。


「ここ、家じゃないの?」

「1階はね。2階が和食の店なんだ」


隠れ家っぽくていいでしょ。なんて先生が無邪気に笑うから、あたしの警戒心はすっかり消えてしまった。


「何でこんなところ知ってるの?」

「ん? 昔ね、知り合いに教えてもらって」


なるほど。こんな住宅街でコッソリとやってるなんて、まるで芸能人とか有名な人専用の店みたいだ。


そんな考えは、店に入った瞬間消え去ったけれど。