「……え」
え? 先生?
目を凝らさなくても、運転席に座るのは先生で間違いなかった。
気付いてないと勘違いしたのか、先生は車の中で手招きをする。
あたしは戸惑う気持ちのままキョロキョロと周りを見渡して、車に駆け寄った。
その間に助手席の窓が開いていて、先生は「乗って」と微笑む。
恐る恐る助手席のドアを開けて、お邪魔しますと心の中で呟きながら革張りのシートに腰掛けた。
泳ぐ視線のままドアを閉め、チラリと先生の顔を窺う。
「さすが、早いね。5分前には来てるだろうと思ってたけど」
……15分前に来てたとは言わないでおこう。
「遅刻はしない主義です」
「へぇ? 先月4回遅刻してたけど」
「っうるさい!」
怒ったあたしに、先生は放課後の時と同じように笑った。ケラケラと可笑しそうに、楽しそうに。
「……先生」
「何でしょう」
「デニム履くんだね」
「ぶはっ! 履くよ!」
「先生はスーツとか、カチッとしたイメージしかなかった」
白い無地のVネックカットソーにグレーのテーラードジャケットは先生っぽいけど、デニムとか履かなそうと思ってたから意外だ。
「カーゴパンツとかチノパンも履くよ?」
「ふぅん」
そう言われても、どんなのか分かんないけどね。



