世界を敵にまわしても



「……椿」


に、電話してみようか。


そう思い携帯を開いて、電話帳から椿の電話番号を表示した。


だけどすぐにその手を下ろしてしまう。


何て言えば、聞けばいいのか分からなかったんじゃない。言えないんだと思ったから。


あたしと、先生の関係。


「……そっか」


言えない、言ってはいけない関係なんだと今更気付く。


まだ始まったばかりだとかの話以前に、先生と生徒という関係が祝福されるべきものではないんだ。


バレたら終わる。


そんな根拠もない不安が襲って、でも学校とか両親の世間体という言葉が頭に浮かんで唇を噛んだ。


……椿にだけでも言いたい。椿ならきっと否定はしない……だけど、言えない。


秘密にしようとか、そんな話を先生としなかった。口にしなくても、当たり前の事なのかもしれない。


「……終わりたくない」


ポツリと呟いた言葉は、本心だった。


……ひとりで考えるのは止めよう。その内、椿には言ってもいいか先生にそれとなく聞けばいい。


閉じた携帯のサイドボタンを押して、時刻を確認すると7時半過ぎ。今頃先生は、家に帰る途中だろうか。


「お風呂入ろうかな……」


先生の電話を待つこの温かい気持ちも関係も、絶対に失くしたくないと思った夜。普段はさっさと洗い流すトリートメントを、10分もおいてしまった。



明日は、先生と初デート。