「……ほら、飲み物」
「待って待って、財布どこやったっけな」
「あぁ、いいよ。今回だけな」
「マァジで!? 奏ちゃん、ラブ!」
――足が、動かない。
3人が話す光景を、あたしはただ瞳に映すだけだった。
「俺てっきり、いつもの4人だと思ってたから4本買ってきちゃったよ」
「あーそっか。俺と椿と美月の分頼んだつもりだったからさー。奏ちゃん飲めばいいよ!」
「そうだよ、飲んでけ」
「お前らね……まぁいいけど」
床に座っていた晴と椿に向けていた先生の視線が、あたしに向けられる。
「高城」
ビクッと肩を跳ねさせたあたしは、直ぐに目を逸らした。
「……は、何飲む? っても、カフェオレと紅茶しか残ってないけど」
「……っいらない」
持っていたCDを置いて、あたしは先生の顔を見ないまま3人が集まる場所へ行く。
床に置いていた鞄を拾い上げて、困惑して痛む頭を上げた。
「ごめん、あたしもう帰んなきゃ」
返事も聞かず、誰の目を見ることもなく、あたしは3人に背を向ける。
平常心でいられない。
そのことだけが頭にあって、手首を引かれたことを理解するのに時間が掛かった。



